日本フューテックはTeam. AstreXとして、
超小型人工衛星用の電源制御回路基板の設計から製造を行っています。
人工衛星の電源供給元は主に”太陽電池”と”バッテリ”の2種類があります。
太陽が太陽電池に照射している時(日照時)および太陽が太陽電池に照射していない時(日陰時)の人工衛星のシステム図を示します。
図1. 人工衛星のシステム図(左: 日照時, 右: 日陰時)
日照時においては、太陽電池から電源制御回路に電力が供給され、各負荷機器へ電力を出力すると同時に太陽電池からバッテリへの充電を行います。また、日陰時は太陽電池からの電力供給が出来ないため、バッテリから各負荷機器へ電力を出力します。
さらにバッテリ電圧がどのくらい低下すると充電を開始するか、何Vまで上昇すれば充電を停止するのか、出力電圧は何Vか、何A流れたら出力を停止させるか・・・搭載する人工衛星のシステムによって仕様は様々です。
人工衛星の電力を制御する回路を電源制御回路(PCU:Power Control Unit)と呼び、加えて出力系統が複数ある場合は電力を分配するための電源分配回路(PDU:Power Distribution Unit)を一緒に搭載する必要がありますが、いずれも人工衛星の各機器へ電力を供給するための重要なコンポーネントです。
民生品用回路基板は主にこれら3つの方法によって基板外に放熱しますが、宇宙空間は真空のため空気がほとんどありません。したがって、空気の移動が生じないことから対流による放熱ができないのです。人工衛星用電源制御回路基板では、主に発生した熱は発熱部品表面から基板の銅箔に伝わり、さらに基板を固定するねじ穴から金属スペーサーを通じて人工衛星筐体外に輻射によって放熱します。
人工衛星用電源制御回路基板は、発熱部品の配置が適切であること,基板の一部に熱が集中しないように発熱部品を分散させること,熱を伝える銅箔の面積が適切に確保できていることが重要になります。
二つ目は特徴的な部品配置(表面,裏面への同一部品配置)です。
人工衛星用電源制御回路は単一故障(単一の原因によって機器所定の安全機能を失うこと)が無いよう、冗長性・ロバスト性を持たせた設計となっております。特に冗長性においては、主となる機能を2並列にすることでどちらか一方が故障した場合でも他方が安全に動作するようにしています。
同じ機能が2つある場合、部品配置に配慮する必要があります。
人工衛星のシステムの一つとして姿勢制御がありますが、その中で人工衛星の筐体内側の6面(もしくは3面)に巻き付けたコイルに電流を流すことで生じる磁場と地球の磁場を干渉させて方位磁石のように人工衛星の姿勢を制御する”磁気トルカ”というものがあります。
電流を使った姿勢制御方法であることから、他の回路で生じた電流が姿勢制御に悪影響を及ぼす可能性が少なくありません。冗長性を持たせる目的で同じ構成の回路を隣同士に配置してしまうと、同じ方向に電流が流れて磁場が強くなり磁気トルカによる正しい姿勢制御が出来なくなる可能性があります。このような状況を回避するため、冗長性を持たせた回路の部品は基板の表面と裏面に同じ位置に配置することで、電流の流れを基板の表裏で逆にすることで、電流により発生する磁場を打ち消します。
長年培った人工衛星用電源制御回路基板のノウハウを生かして、民生品とは少し異なる設計思想の回路基板設計も行っております。